『お菓子の箱だけで作る 空箱工作』
(ワニブックス)/はるきるさんに聞く

2019年11月4日

人気空箱工作、初の作品集

若き作家が作り出す空想の箱庭

 

 SNSに作品を投稿するたび、話題を呼ぶ空箱職人「はるきる」さんの初書籍『お菓子の箱だけで作る 空箱工作』が、ワニブックスから7月に刊行された。プリングルズの紳士たちや、アルフォートの空飛ぶ船など、もしかしたら一度は目にしたことがあるかもしれない、お菓子の空箱で作った作品の数々。図書館からの注文数が同社書籍内で1位になるなど発売以降、大きな反響を呼んでいる。全国各地で開催している展覧会も好評を博しているはるきるさんに、作品制作の舞台裏やアーティスト活動のこれまでとこれからについて話を聞いた。

 

・空箱からの変化を楽しむ


はるきるさんは現役の芸大生。幼い頃から紙工 作が好きで、「つくってあそぼ」の「ワクワクさん」 に憧れていたという。


 紙工作の基本、はさみや接着剤の使い方などは、すべてワクワクさんから教わり、その後は独学です。立体を平面に切り開いていったとき、どういった形になるか、という経験を積み重ねていく中で、ある日ふと、このまま捨ててしまうお菓子の空箱も、自分の好きな紙工作に使えるな、と思い空箱作品を作り始めました。
 もとの空箱が持つ世界観や色合い、デザインを活かした作品作りにこだわっていて、かっこいいものから可愛いもの、幻想的なものまで作品の世界観を広げることも意識しています。
 作品を観るうえで注目してもらいたいのは、空箱から作品への「変化の面白さ」。見慣れたお菓子の箱が、思いもよらない作品になる驚きを楽しんでほしいです。

主にSNSで作品を公開。新しい作品を出すたびに バズり、フォロワーも増え続けている。

 InstagramやFacebookも使い、最近ではYouTubeも始めましたが、一番大きいのはやはりTwitterですね。リツイートのシステムが僕に合っているのかもしれないです。僕の作品を知っている人が増えたおかげか、SNSでお菓子メーカーさんの新商品の投稿に、「これではるきるさんが作品を作ったらどうなるのか楽しみ」といったコメントもつくようになりました。「空箱工作=はるきる」のイメージが定着してきたんだなぁ、とありがたく思います。




「ライトの時計塔」クッキーが転じて三日月に

・作品集かつ作り方の説明書


同書でははるきるさんのこれまでの作品をま とめているほか、誰でも簡単に作れる空箱工作も解説。

 普段、作品を作るときは頭の中だけで完成図を思い描いて作っているので、小学生でも作ることが出来る、を意識した設計図作りは新鮮な挑戦でした。どこまで簡単にすればいいかにも悩んで、友人に聞いてみたら「簡単そうに言うけど、それは出来ない!」と言われたり(笑)。たくさんのアドバイスをもらって書き上げました。
 出版してからは、実際に制作した作品の画像を送ってもらうことが多くて、とてもうれしいです。小学生のお子さんが夏休みの宿題の工作で僕の作品を作ったら、他の子
と被っちゃった!なんて面白いエピソードも教えていただきました。


今年から神戸、名古屋、東京で作品の実物を展 示する展覧会を開催中。サイン会にも多くのファンが訪れる。


 普段SNS上で多くのコメントを頂いていますが、実際に展覧会に来ていただいて対面したお客さんの声を聞くことは、何物にも代えられない貴重な経験です。特に思い出深かったのは、小学1年生くらいのお子さんに「お年玉の1万円を払うから、この作品を買いたい!」と言われた時。この子にとっての1万円の価値は大人にとってのどれほどのものだろう、これはすごいことだ……と、うれしく思いました。
 また、SNSのフォロワーではない、書籍からのファンにもたくさんお会いできています。お孫さんから知ったという老夫婦にも来ていただいて、スマホではなかなか見せにくいけど、中高生の方々が書籍を買って、それを家族に紹介することなどで、知っていただける機会が増えました。

来年春の大学卒業後は、上京してアーティスト活動を続けていくはるきるさん。これからの目標の一つに海外進出も視野に入れているという。

 先日展覧会で、海外の小さなお子さんが、リッツで作ったライオンを見た時に狂喜乱舞してくれて、(僕の作品は)言葉の壁を超えられる、グローバルな作品なんだ、という実感を得ました。今は日本のお菓子などで空箱作品を作っていますが、海外のお菓子を使えば海外でも受け入れられるんじゃないかと考えています。
 また、書籍の2作目もいずれ出したいですね。1作目を読んだ方で、SNSのファンからはもっと作品集よりのものが読みたいと求められ、一方お子さんからはもっとたくさんの作品の作り方が載っている解説書が欲しいという意見も頂きました。今回は初めてということで併録しましたが、次作は片方に寄せた作りを目指して、もし出せたら両方とも……なんて思ったりもしています。



池袋パルコで開催された展示会会場にて

・書店でもワークショップを


毎回異なる世界観の作品でファンを楽しませて いるはるきるさん。そのインスピレーションのもとはネットや書店などだそうだ。


 僕は実際の美術作品を観るために現地まで足を運ぶよりは、ネットでも本でもいいから大量の作品やイラストを見るべき、という方針です。観るものもペーパークラフトに限らず、いろいろな発想を学びたいので、日本画や油絵から昨今のアニメまで、クリエーターが作るものは手広く観ています。最近だと、『約束のネバーランド』の作画もされている出水ぽすか先生の画集などを観ていた時に、世界観の構築の仕方などが凄く勉強になりました。
 また、書店にもよく足は運ぶのですが、自分の本が棚に置かれているのを初めて見た時は、やっぱり感動しました。書籍の中の作品を書店員さんが作って一緒に飾ってくれている書店もあって、ありがたいです。
 今後の活動の中で、ワークショップなども開いていきたいと思っているので、もしそういったスペースがあれば書店の中でもイベントを開催したいですね。




代表作「プリングルズの紳士たち」




B5判/96ページ
本体1200円


はるきる


1997年名古屋生まれ。空箱職人。神戸芸術工科大学アート・クラフト学科在籍。2017年、「明治ザ・チョコレート」の箱でロボットを作ったのをきっかけに空箱工作を始め、作品をTwitterで発信。そのクオリティーの高さが毎回話題となり、テレビでも多数取り上げられている。現在は新作を制作しながら、企業とのコラボレーションも行っている。
Twitter @02ESyRaez4VhR2l