かつて「読書」という行為は、知識人のためのものだった。しかし今の日本では、良くも悪くも1日に約200点の新刊が刊行され、誰もが「読書」を楽しむことができる。さらに皮肉なことに、新型コロナウイルスにより、多くの人が「読書」という行為の尊さ、奥深さ、楽しさを再認識したのではないだろうか。今回、本好きが本を楽しむための本を紹介する。当特集で「本」の魅力を再発見してほしい。
読書する人だけがたどり着ける場所
齋藤孝/SBクリエイティブ

新書判/192㌻/本体800円
「本」を読むからこそ、思考も人間力も深まる
累計20万部のロングセラーとなっている本書は、文学・読書家の大家である著者が、ネットの時代だからこそ問いたい「読書の効能」と「本の読み方」を紹介している。
「ネットがあるのになぜ本を読むのか」「マンガで十分人の心理はわかる」。そんな声もよく耳にするが、本当にそうなのかを読者に問いかける。
ネットで文章を読むとき、私たちは「読者」ではなく「消費者」になっていると、著者は主張する。「本」を読むからこそ、「作者の思考力」「幅広い知識」「人生の機微を感じとる力」が身に付くのだと。本書は、「この時代だからこそ本を読む理由」から始まり、「思考力を深める本の読み方」「知識を深める本の読み方」「人格を深める本の読み方」「難しい本の読み方」など、さまざまな読書の仕方を伝授。各章では、著者おすすめの名著も紹介する。
担当編集者は「『情報はネットでいいじゃん』という時代に、本に対する愛情が感じられる一冊」と話している。
本の世界をめぐる冒険
ナカムラクニオ/NHK出版

A5判/104㌻/本体670円
「読む」って、どんなこと?
高橋源一郎/NHK出版

A5判/120㌻/本体670円
累計17万部の人気シリーズ「読む」ことを再考察する
累計17万部を突破する「学びのきほん」シリーズの、『本の世界をめぐる冒険』(ナカムラクニオ)は、本の定義を「人と人をつなぐ媒体」として本の歴史を数千年単位で学び直すことで、私たちの考える「本」についての見方を少しだけ変えてみることを提案する。
また同シリーズの『「読む」って、どんなこと?』(高橋源一郎)では、無意識におこなってきた「読む」という行為を疑ってみることで、「本物の読書とはどんなものなのか」を、著者と対話をしているかのような読書体験とともに考えていく。
新型コロナウイルスの影響で、「読書」が今まで通りにできなくなった現代。これを好機と捉え、両書を通じて「本を読む」ことについて見直してみると、今までとは違った風景が見えてくるのではないか。
本シリーズは、どれも100ページ程度でまとめられているため、気軽に読書をしながら教養を得られ、読書の幅を広げてくれるシリーズとして好評を博している。
本のリストの本
南陀楼綾繁・書物蔵・鈴木潤・林哲夫・正木香子/創元社

四六判/304㌻/本体2,300円
本のリストをめぐるエッセイ集
リストから読書は始まっている
本を愛してやまない5人の著者が「本のリスト」を巡ってそれぞれに文章を寄せたエッセイ集。名曲喫茶に積まれていた本のリスト、画家が読んだ本のリスト、古書目録に掲載された架空図書のリスト、戦没学生の手記に残された本のリスト、マンガの中の本棚に描かれた本のリスト、戦前のベストセラーリストなど、様々な時代、様々な場所に存在した47の「本のリスト」を紹介。なかには、現実に存在しない本のリストや、著者が作ったリストも含まれる。リストの本を紹介するだけでなく、リストそのものにまつわる物語や歴史、著者自身の体験などが綴られる。
著者は、ライター、古本コレクター、子どもの本専門店の店長、画家、文筆家と多様な面々。独自の切り口で選ばれたリストには、各人の個性が表れている。本の冒頭には、各著者が紹介する「私を作った十冊の本」のリストも掲載。
リストを眺めているだけで、本から本へと好奇心が繋がってゆく、すべての本好きに贈りたい一冊。
絶景本棚2
編:本の雑誌編集部/本の雑誌社

A5判/256㌻本体2,300円
愉悦の背表紙読書
本棚が主役!絶景写真集の第二弾
あなたの本棚見せてください―。趣味嗜好だけでは片づけられない、各分野乱れ打ちの膨大な本たち。あふれる蔵書はどうやって本棚に収まっているのか。背表紙からうかがう持ち主の世界。本書は大評判だった、月刊『本の雑誌』の巻頭人気連載の書籍化『絶景本棚』の続編。披露しているのは夢枕獏、夏目房之介、中川右介ら文筆家に、デザイナー、編集者、SF、ミステリ界の蔵書重鎮に、本好き会社員まで33人の本棚風景を収録。全ページカラー写真に写るのは延々と本ばかりで、特に力を入れているのは背表紙。解読性にも注力している。「あの本の隣に何を並べているのか」が気になる読者も多く、背表紙を読める解像度で掲載し、楽しめる異色の本棚写真集となっている。本の量に圧倒されつつも整然とした憧れの空間から、息を潜めるような魔窟まで貴重書、豪華本、全集、一般書、百均本等々、個人の蔵書ならではの多彩な本棚を掲載している。