第7回「渡辺淳一文学賞」 受賞作は葉真中顕『灼熱』

 

 

 集英社などが主催する文学賞「渡辺淳一文学賞」の第7回受賞作が、葉真中顕『灼熱』(新潮社)に決定した。

 

 

 渡辺淳一文学賞は、前年に刊行された小説単行本および単行本未刊行の文庫の中から、「純文学・大衆文学の枠を超えた、人間心理に深く迫る豊潤な物語性をもった小説作品」に与えられる賞。過去には川上未映子『あこがれ』(第1回)、平野啓一郎『マチネの終わりに』(第2回)、東山彰良『僕が殺した人と僕を殺した人』(第3回)、千早茜『透明な夜の香り』(第6回)など、話題作がジャンルを問わず受賞している。

 

 

 葉真中氏は、1976年東京都生まれ。2013年に介護現場の厳しさを描いた『ロスト・ケア』で日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した。その後、吉川英治文学新人賞の候補となった『絶叫』『コクーン』や、大藪春彦賞、日本推理作家協会賞をW受賞した『凍てつく太陽』などの作品を世に送り出し、社会派ミステリーの旗手として注目を集めてきた。ほかの著作に『Blue』『そして、海の泡になる』などがある。

 

 同作品は、葉真中氏が5年をかけて取り組んだ超大作。戦後のブラジルで日本移民を二分した「勝ち負け抗争」をもとにした物語で、分断が進む現代に大きな問いを投げかけるエンターテイメント巨篇。綿密な取材に基づきながら、物語の面白さも兼ね備えた本作は、刊行後も熱く支持されてきた。

 

 今作のもとになっている「勝ち負け抗争」。そこには今の日本にも通じる、人間社会の普遍的な問題と葛藤が横たわっている。執筆の経緯について葉真中氏は「我々人間は『信じたいものを信じてしまう』生き物だ。とくに、自分自身に『自明なもの』としてインストールされてしまっている見方や価値観を疑うには、多大なコストがかかる。私自身、その問題に向き合いながら、自分なりの誠実さをもって、このテーマに挑戦したいと思った」と語った。

□四六判/672ページ/定価2860円