『旅する小舟』求龍堂

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Message

旅をする小舟は私のことだ、と気がつく瞬間がある。

 不思議な2人の折り紙で誕生した小舟が、海原へ出かける物語絵本『旅する小舟』は、この本がデビュー作とは驚きの絵本作家がたった1本の黒ペンで描いた冒険物語です。

 真っ白でのっぺらぼうの小舟は、穏やかな波間を漂っていたかと思えば、突然巨大波に飲まれたり、怪物にちょっかいを出されたり、支配社会による暴力のとばっちりを受けたりもします。

 言葉が一切ないこの絵本で繰り広げられるドラマは「まさにこの世はままならない」という人の世の常を思い起こさせます。

 翻弄される小舟を必死に追ううちに、この小舟はもしかして自分のことでは・・・と思い当たる人のいかに多いことか。それでも切り抜けていくけなげな小舟の姿に、気がつくと何時間も夢中になります。

 絵が惹きつける力に驚かされる一冊です。

 

編集長
清水恭子

 

Report

作文コンクールやパネル展が好評開催中 プレゼントに適したラッピング仕様も展開予定

 「文字のない絵本」である同書は、昨年11月に初版6000部で刊行。約3週間で3000部の重版を決定し、現在2刷9000部に達している。

 発売後、紀伊國屋書店新宿本店をはじめとする全国書店でのパネル展実施や、クリスマスに合わせ400部限定で用意したラッピング仕様が完売するなど、積極的な販促施策が奏功し売れ行きは好調だ。

 各所でも反響が大きく、2月4日にNHK「あさイチ」で紹介されたことでネット書店を中心に大きく動き、リアル書店ともに1カ月間売れ行きが伸びたほか、同書を気に入った書店員がYouTubeやSNSで紹介するなど、口コミでの話題も広まっている。

 大人向け絵本として捉える読者も多く、デザイナーや漫画家からの支持もあり、絵本棚だけでなく芸術棚での動きも良いという。

 また、同社では現在、好きな絵を1つ選び、自分だけの物語を作る「私の小舟物語作文コンクール」を8月末日〆切で募集中。夏休みの読書感想文にもオススメとし、小中学生の若年層にも読者を広げていきたいとする。

 同社は今後、クリスマス時期以外にも、プレゼント需要に合わせ、ポストカード付きなどのラッピング仕様を提案していきたいと話す。またパネル展の開催店舗も随時受け付けており、引き続き販促展開に力を入れていくという。

 

解説を担当した岸本佐知子氏の直筆POP