全受賞作品の編集者が語る
第7回「料理レシピ本大賞」特集

2020年9月15日

 

第7回の全受賞作品を一挙紹介!!編集者が語る制作の舞台裏

 

 


ライツ社

リュウジ式悪魔のレシピ

リュウジ

 企画の始まりは、2018年の終わり頃、ローソンで「悪魔のおにぎり」なる商品が、20年間不動の売上1位だった「ツナマヨ」の販売数を抜いた、というニュースでした。「悪魔」という響きに人はここまで惹きつけられるのか。その時点で、『悪魔のレシピ』というタイトルを思いつき、ぴったりの料理を発信している人といえば……ということで、リュウジさんに声をかけました。
 ライツ社は、実は2016年に創業したばかり、社員数5名の兵庫県明石市にある小さな出版社です。すでにヒット作を連発していたリュウジさんもさすがに断ろうとしたそうですが、「わざわざ明石から来るって言ってんだから……」と言ってお会いしてくれたのは、今となってはファインプレーだったなと思います。
それから1年をかけ、#悪魔のレシピというハッシュタグをつけてTwitter発信し続けてもらい、企画当初は40万人だったフォロワーも発売日には100万人を超えました。
 『悪魔のレシピ』は、「最短で、最高の味を作れる」をコンセプトに、レシピ名の悪魔のような囁きで台所に立つまでの億劫な気持ちを盛り上げ(実際、ここが一番大事ですよね)、作ってみたら簡単で、やっぱり美味しい! を目指しました。しかも、掲載レシピの半数が「低糖質」です。
 コロナ禍で、僕自身もどれだけこのレシピに救われたか。これからも、この本がたくさんの人の手助けに、そして料理って意外と楽しいんだと気づいてもらうきっかけになれば嬉しいです。

ライツ社代表取締役/編集長
大塚啓志郎

□A5変/128㌻/本体1300円

 

 

 

学研プラス

藤井弁当 お弁当はワンパターンでいい!

藤井恵

 使う道具は卵焼き器ひとつ。おかずは肉や魚介の主菜と、ゆで野菜に味付けした副菜、そして卵焼きの3つ。作る順番もいつも一緒。なのにとびきりおいしいお弁当が出来る­­――。それが藤井恵先生が弁当作り15年の経験から考え出した『藤井弁当』です。
 藤井先生のブログには日々の食事が紹介されているのですが、お弁当のことが度々アップされている時期がありました。就職されたお嬢さんが、自分でお弁当を詰めて持っていき始めた頃だったようです。お弁当初心者のお嬢さんにアドバイスを送るように、お弁当の注意事項などとともに紹介されていたのが、卵焼き器でおかず3品を作る方法。うわー、これって合理的、作りやすそう!と思ったのが、本書を制作するきっかけです。
 長年お弁当を作ってきた先生が、お弁当作りで大切なのは「毎日作り続けること」と言います。それが実践できて、食べる人も満足できるお弁当を考え続けてこの形にたどり着いたとか。「これなら出来そう!」「ワンパターンでいい、の言葉にほっとした」「お弁当作りの悩みが一気に解決」など、多くのご賛同をいただきました。そして、この本がきっかけで私自身もお弁当作りを始めました!本書を見ると、作りたくなること必至です。
書籍出版事業室
小林弘美

□B5変/128㌻/本体1200円

 

 

 

宝島社

syunkonカフェごはん
レンジでもっと! 絶品レシピ

山本ゆり

 「syunkonカフェごはん」シリーズ9冊目となるこの本は、山本ゆりさん持ち前の探究心で、電子レンジの持てる可能性をとことんまで追求した本、と言えます。レンジレシピが難しい理由のひとつに、「機種によって仕上がりがバラバラ」という点があります。この本では、10人以上の試作チームで、夜な夜なターンテーブル・フラット式、倍量にした場合の加熱時間と水分量(単純に2倍ではない)、とありとあらゆる角度から検証を繰り返しました。
 山本さんの「せっかく作って頂くからには、めっちゃ美味しいと思ってほしい! 最高のレンジ本を届けたい」という熱意が実り、たくさんの読者様に読まれ、こうして賞まで頂けたことは編集者冥利に尽きます。今日もどこかの家のキッチンでお役に立てていることを想像し、このレンジ本に毎日助けられている一人として嬉しく思っています。
ムック局 第2編集部編集長
瀬尾香織

□AB判/96㌻/本体740円

 

 

 

マガジンハウス

朝10分でできる スープ弁当

有賀薫

 数年前から人気を集めている「スープジャー」。あったかいまま食べられるのが魅力ですが、作るのもいたって簡単。鍋に具、水、調味料を入れたらひと煮立ちさせ、ジャーに注ぐだけ。お昼まで待つ間に保温調理ができるから、朝10分くらいで作れるというわけです。私自身も一度使ってみると手放せなくなり、忙しい人でもこれならできそうだと確信しました。
 著者の有賀薫さんは、3000日以上毎日スープを作り続けるスープ作家。本書では、あまり手をかけられない人のために、最小限の手間でおいしく作れる60品を紹介しています。ポトフやカレー、シチュー、野菜たっぷりのみそ汁など、食べごたえがあって、1品でお腹も心も満たされるものばかり!
 不安が続く日々ですが、「スープ弁当」でみなさんがほっとするお昼を過ごしてくれたら嬉しいです。
書籍編集部
和田泰次郎

□A5判/128㌻/本体1300円

 

 

 

光文社

力尽きレシピ

犬飼つな

 “HP(ヒットポイント=残りの体力)によってレシピの難易度を分ける”というかつてないゲーム感覚のメニュー構成が若い読者の間で「面白い!」とバズったことから火がつき、ポップなイラストも相まって多くの方々に手に取っていただける一冊となりました。
 本書は、ホンネで現代人に語りかける生活書でもあります。仕事に、勉強に、家族のケアにと毎日飛び回っている私たちは、帰宅する頃にはまさに力尽きていて、インスタ映えな夕食なんて毎晩は作れませんし、外食ばかりでは家計がもちません。「でも、無理しなくって大丈夫!」、省ける手間を省き、優秀な市販品も大いに利用。そこにほんのひと手間を加えた温かい食事をとれば、元気=HPは戻るのです。ぜひ忙しい日にはこの本を開いて、キッチンに立ったご自分を褒めてください!
ノンフィクション編集部編集長
加藤ゆかり

□A5変/128㌻/本体1100円

 

 

 

福音館書店

おにぎり

平山英三・文/平山和子・絵

この『おにぎり』が最初に出たのは39年前、1981年*のことです。平山英三さんと和子さんのご夫婦で作られました。英三さんは残念ながら今年6月に亡くなられましたが、この絵本が出た時の「作者のことば」でこのように書かれています。「握力のかけかた、握る回数、何秒間握るか、などのことはおにぎりの作りかたとして、数値でつたえることは出来ません。手が学び、経験することによってのみ可能です。おにぎりは、手が作ります。」“おにぎりは手が作る”――まさにその通りですね! この『おにぎり』は、熱々のご飯を手のひらにのせ、握り、海苔を巻いておにぎりが出来上がる様が生き生きと描かれ、おいしさだけでなく作った人の愛情まで感じられます。長年子どもたちに愛されているこの絵本をこどもの本賞に選んで頂き、誠にありがとうございました。
こどものとも第二編集部 編集長
一戸盟子
*月刊絵本「こどものとも年少版」1981年6月号として刊行。その後、1992年にハードカバー化。

□22×21cm/24ページ/本体900円

 

 

 

大和書房

頑張らない台所

村上祥子

 初めて村上祥子先生にお会いしたのは2年前。そのチャーミングな姿に「本当に77歳?」と我が目を疑いました。50年前、料理研究家としてスタート。この年代の料理の先生はお嬢様の象徴であり、女性のステータスの最高峰でした。著者自身、作ったレシピ数は50万。今は公立大学法人福岡女子大学の村上祥子料理研究資料文庫にすべてが保存されています。
 しかし村上先生の魅力は《気取らなさ》。電子レンジでパンは焼くは、ビーフシチューはマグカップで作る。《ハイソ》とは一線を画しています。高級なものや手の込んだものすべてを知り尽くした結果、著者の中に残ったものとは?
 優しくてお手軽で、ユーモアがあって、無駄がない。読んで楽しい、作って美味しい、食べて健康! 「頑張らない台所」は50年かけて編み出された、台所のコツです。
編集部部長
長谷川恵子

□四六判/224㌻/本体1400円

 

 

 

サンクチュアリ出版

私でもスパイスカレー作れました!

印度カリー子・先生/こいしゆうか・マンガ

 「スパイスカレーを日本の家庭で気軽に作れるようにしたい」と活動中の印度カリー子さんと、その想いに深く共感されたイラストレーター・こいしゆうかさんとのご縁により、本書は誕生しました。
 私自身はじめは、スパイスカレー=お店で食べるもの、というイメージでしたが、実は最強の自炊料理と教えて頂き衝撃を受けたことから「料理ビギナーでも楽しく作れる」をコンセプトに制作しました。実際に取材で、料理初心者のこいしさんが印度カリー子さんに一から学び、「つまずきポイントあるある」もマンガでリアルに描いて頂いています。
 発売後は、普段あまり料理をしないという方からも「お家でこんなに簡単においしく作れるなんて!」と反響を頂き、さらに今回の受賞で喜びの気持ちでいっぱいです。
 この本が、多くの人にとってスパイスカレーを楽しむきっかけとなったら嬉しいです。
編集部
大川美帆

□A5判/156㌻/本体1200円

 

 

 

 

ワニブックス

材料2つから作れる! 魔法のてぬきおやつ

てぬキッチン

てぬキッチンさんYouTubeアイコン画像

てぬキッチンさんYouTubeアイコン画像

 

 この度はお菓子部門の大賞に選んでいただき、誠にありがとうございます。「簡単で美味しい!」とYouTubeで大人気(現在チャンネル登録者数55万人!)のてぬキッチンさんのレシピを書籍化するにあたり、“てぬき”に徹底的にこだわった一冊を目指して決めたルールは2つ。全レシピを「材料は最大で5つ」「オーブン不使用」とすることでした。
 てぬキッチンさんには、少ない材料、オーブン以外の調理法でも満足いく美味しさになるまで、何度も何度も試作を繰り返していただきました。原稿にはYouTubeのコメント欄にいただいた疑問や意見を反映し、より明解に、失敗しないための細かいポイントも入れ込み、本書のレシピが完成しました。
 おかげさまで料理好きの方はもちろん、お子さんやお孫さんと作る方、初めてお菓子作りに挑戦した男性など、幅広い層の読者様から反響をいただきました。「今までのお菓子作りは一体なんだったのだろう」というお声や、「自分でも作れた」「おうち時間が楽しくなった」というお子さんのお声なども届いております。
 面倒、時間がかかる、失敗しやすい……本書がそんなお菓子作りのイメージを覆し、おうち時間を楽しむきっかけになれば幸いです。第二弾のごはん編『魔法のてぬきごはん』(2020/9/18発売)もご期待ください。
 たくさんの読者の方に届けてくださった書店員の皆様、本書に関わってくださった皆様、本当にありがとうございました!

書籍編集部副編集長
森摩耶

 

□B5判/128㌻/本体1200円

 

 

 

マガジンハウス

志麻さんの気軽に作れる 極上おやつ

志麻

 伝説の家政婦として知られる志麻さんは、小学生の頃からお菓子名人として有名だったそうです。
 一方、担当の私は食べるのが専門。お菓子づくりには「難しい」イメージがあり、なかなか手を出せないジャンルだったのですが、志麻さんに出会って、その思い込みはパッと消えました。家にある材料を使って、気軽に作れるメニューをいくつも教えてもらったからです。
 本の出版が決まってから、志麻さんは、私のようなビギナー読者でも楽に作れるように、さらに試作を重ねてくれました。無駄な工程を省き、分量も量りやすいように。いろんなところに工夫が詰まっているので、読者の方から寄せられる「作りたいメニューがたくさん載っている」「写真での説明がわかりやすい」「何度もリピートして作っている」などのメッセージは本当にうれしく、志麻さんと共有しています。
 今回の本では、書店員の方々を招いた試食会も開催したのですが、志麻さんの「家庭で作るおやつ」への思いを直接伝えられ、とても有意義なひと時でした。その時に来てくださった方々はじめ、多くの書店員の皆様に応援いただき、このような賞をいただけたことは望外の喜びです。心より感謝申し上げます。
書籍編集部
瀬谷由美子

□B5変/96㌻/本体1400円

 

 

 

主婦と生活社

フライパン煮込み

若山曜子

 時間がかかる煮込み料理が、身近なフライパンを使ってたった5~15分で作れるというインパクト。見た目の豪華さに反して、レシピがとびきりシンプルであることなどから、たくさんの喜びの声が寄せられています。
 そしてさらにうれしいのは、“ごはんにかけて食べておいしい”という点。どんなに時間がない日も、ワンプレートでごはん作りが完結。サラダやスープなどの副菜レシピもついていて、どれも抜群においしいのです!
 実は若山さんには、煮込み時間を15分以内にするのと材料をシンプルにするのに、かなり工夫を重ねていただきました。野菜の切り方から肉の選び方…。今ではその努力が報われて、本当によかったなあと感じています。おかげさまでお料理初心者からベテランの方まで、たくさんの方々のキッチンで、季節を問わず大活躍してくれる1冊となりました。
料理編集部
足立昭子

□B5判/88㌻/本体1300円

 

 

 

 

受賞版元からのメッセージ

学研プラス

 

光文社

 

主婦と生活社

 

大和書房

 

宝島社

 

マガジンハウス

 

ライツ社