今こそ学ぶ!地政学本特集

 

新型コロナウイルスに加え、安倍晋三元首相の辞任と菅義偉新内閣の発足は、日本を取り巻く環境のみならず、国際情勢や各国間の関係に少なからず影響があるだろう。また今年11月には、アメリカ大統領選挙も控えている。そういった背景からか、新星出版社の『サクッとわかるビジネス教養 地政学』が、7万部突破と好調だ。そこで各社がプッシュする地政学本を紹介する。

 

マンガでわかる地政学

監修:茂木誠/池田書店

 

 

累計発行部数4万4000部!わかりやすい地政学本の先駆け

池田書店が2016年12月に発行した本書は、現在、累計発行部数4万4000部のロングセラー。本書は、地理と歴史と政治が絡み合う難解な学問というイメージが強かった地政学を、マンガで分かりやすく解説したことが反響を呼び、多くの書店が話題書や多面での展開を実施するなど、地政学書市場を開拓する端緒となった。
編集面でも、国際情勢の理解を深める工夫を凝らす。編集にあたり、「地政学を通じて、わかりやすく国際情勢を読み解くこと」を重視。周りは海なのか、山なのか、隣国はどんな国か、など、「地理的条件からその国の繁栄や利益を考えることが国際情勢を理解する近道」という見地から、アメリカや中国、ロシアなど、各国を中心にした地図を掲載するほか、付録として、切り離しできる「今がわかる世界地図」も付いている。
編集担当者は「本書を読めば、各国リーダーの頭の中や、争いの理由がわかるようになる。人気予備校講師として活躍する茂木誠氏が監修を務め、一番やさしい地政学の本」と力を込める。□A5判/208㌻/本体1350円

 

 

世界史で学べ!地政学

著:茂木誠/祥伝社

 

世界史をわかりやすく解説!世界を9ブロックに分けた地政学本

国家間の対立を地理的条件から説明する地政学はリアリズムの一つであり、敗戦後の日本では研究自体が禁じられ、タブー視されていた。
本書のポイントは、その地政学を使って世界史を解説しているところである。「『地政学』を使えば、世界の歴史と国際状況の今がよくわかる」と銘打ち、世界を9ブロックに分けたことでわかりやすく解説。
著者は駿台予備学校、ネット配信のN予備校で大学入試世界史を教えている。
「万里の長城はなぜつくられたのか」「なぜ朝鮮半島は侵略され続けたのか」「アメリカが21世紀に入って急速に衰えを見せ始めたのはなぜか」といった疑問について、地政学という補助線を引くことで解決する、目からウロコの一冊。
担当編集者は、「著者は駿台予備学校のカリスマ講師で、語り口が面白くて読みやすい。また、著者自身のYouTube『もぎせかチャンネル』で本書を紹介しているので、読者層がますます広がりを見せている」と話している。□文庫判/336㌻/本体820円

 

 

海の地政学 覇権をめぐる400年史

著:竹田いさみ/中央公論新社

 

 

海を制する者が世界を制す
海洋をめぐる400年の世界史をまとめた一冊

地球の表面積の7割以上を占める海は、大航海時代以来、スペイン、オランダ、イギリスにアメリカ、そして中国など、その覇権をめぐって多くの国々が争ってきた、地政学においても最重要の要素。本書は、その「海の地政学」について、航路や資源、国際的な法制度など様々な論点から、400年に及ぶ、海をめぐる激動の歴史を描いている。
著者の竹田いさみ氏は、獨協大学外国語学部教授で、専門は海洋安全保障。著書に『物語 オーストラリアの歴史 多文化ミドルパワーの実験』(中央公論新社)や『世界史をつくった海賊』(筑摩書房)などがある。
刊行後のあるインタビューで、本書を執筆した動機について「『海』に関する素朴な疑問を解きたい」と語っていた著者。いま話題の地政学を、海という側面から分析した本書は、多数の書評でも取り上げられ、注目を集めている。
各国の思惑が交錯し、形作られてきた海洋秩序を前にして、四方を海に囲まれた日本はどう向き合うべきか。新時代の地政学を学ぶことができる一冊だ。□新書判/288㌻/本体900円

 

 

「地政学」は殺傷力のある武器である。

著:兵頭二十八/徳間書店

 

 

地政学によって国は栄え、地政学によって国は滅ぶ

世界は今、大転換期にある。アメリカの衰退による覇権構造のゆらぎが、地政学リスクとして顕現しつつあるからだ。コロナ禍のなかで拡張主義に走る中国の脅威に直面する我が国にとって、地政学の重要性はこれまでにないほど高まっている。
本書は、地政学の嚆矢となったアメリカ海軍大学校教授アルフレッド・マハンのシーパワー理論の成立から説き起こし、2次にわたる両世界大戦を扱ったマッキンダー、スパイクマンのハートランドとリムランド理論を中心に軍事史や科学技術史の豊富な知識を駆使して独自の視点から解説。「地政学を知らずにコロナ時代の防衛はありえない」とし、マッキンダーをはじめとする地政学を再検討し、中国を含む新しい地政学を提唱する。
さらにマッキンダーがなしえなかった中国大陸の地政学を論じ、朝鮮半島を含む旧儒教圏の脅威に直面している日本防衛の地政学を構想する。担当編集者は、「日本が新たな地政学的リスクの中で、どう生き延びるかを教えてくれる最強の教科書」と述べる。□新書変/344㌻/本体1,100円