選考員や編集者を驚かす衝撃的な作品で新人賞を受賞し、鮮烈なデビューを果たした新人作家など、これからの出版シーンを牽引する作家が続々と登場しています。その中から、各出版社がプッシュする、来年の活躍が期待される注目の作家を一挙紹介!
上田未来 (うえだ・みらい)
小説推理新人賞作家、前代未聞の衝撃作でデビュー!
年齢:49歳
出身:山口県
作家になるきっかけ:
第41回小説推理新人賞受賞
好きな作家:スティーブン・キング
好きなもの:コーヒー
双葉社 担当から
小説推理新人賞受賞作家、衝撃のデビュー作『人類最初の殺人』が4月に発売となります。
本書は「原初の犯罪」を辿る、本邦初の連作ミステリーです。怒れる原始人はどうして仲間を殺してしまったのか、貧しきエジプト孤児が誘拐で一攫千金、遷都先にまつわる奈良時代の盗聴騒動……意外性とユーモアと、どんでん返しの連発、満足度200%をお約束します。
軽妙な筆致と抜群のリーダビリティは新人とは思えない力作。2021年、大ヒット間違いなしの超注目傑作です!
上間陽子 (うえま・ようこ)
撮影:新里涼子
ひとの語りを聞きとり、新しい言葉で沖縄を描く
1972年、沖縄県生まれ。琉球大学教育学研究科教授。普天間基地の近くに住み、16年夏、うるま市の元海兵隊員・軍属による殺人事件をきっかけに、沖縄の性暴力について書くことを決意。翌年『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』(太田出版)を出版。現在は沖縄で、若年出産をした女性の調査を続けている。
筑摩書房 担当から
研究会で初めてお会いしたとき、上間さんは目の前で原稿を朗読されました。その声がずっと耳に残っています。『裸足で逃げる』という本の「キャバ嬢になること」という一篇でした。
『海をあげる』は沖縄での生活を記録したエッセイ集で、これまで誰かの語りを聞く側だった上間さんが、言葉を失うような状況にあって、自分の声を聞くようにして書いたものです。
普段遣いの言葉で、淡々と、いま目の前で起きている理不尽を描いています。風の音が聞こえてくるような美しい文章です。でもそこには、上間さんの叫び声がまじっています。とてつもない本ができました。どうか、この声を受けとめてください。
『海をあげる』/筑摩書房
加納愛子 (かのう・あいこ)
言葉選びの天才!
お笑い芸人がエッセイストデビュー!
1989年、大阪府生まれ。2010年に幼馴染の村上愛とお笑いコンビ「Aマッソ」を結成。ネタ作りを担当している。本作が初めての著作となる。Webちくまにてエッセイ「何言うてんねん」を連載中。
筑摩書房 担当から
初めて加納さんにお会いしたのは、阿佐ヶ谷の小さいライブハウスでした。担当した本を持って出待ちをしていた怪しい私に、「年も近いし、一緒に頑張りましょう」と言ってくださって「死ねる」と思い、その勢いのままエッセイ連載を続けてきました。
加納さんは、目の前の人をとてもよく見ていて、微妙な感情の綾まですくいとり、大切にする方です。収録されたエッセイの一編一編に、実際にお会いしたときの加納さん自身が宿っています。
鋭くて、繊細で、どこか過去の大切なものを思い出させる、今いちばん新しい言葉がここにあります。
この本で、加納愛子という人を、深く知ってください。
『イルカも泳ぐわい。』/筑摩書房
北原一 (きたはら・いち)
鋭いセンスで物語を紡ぐ
デザイナー兼業作家
出身:東京都
作家になるきっかけ:
美大出身のデザイナーで、創作の幅を広げ
てみたいと考えたため
趣味 : 格闘技観戦
ポプラ社 担当から
『ふたり、この夜と息をして』(シガーベール改題)にて第9回ポプラ社小説新人賞特別賞を受賞し、デビュー。受賞作は心にある傷を隠して生きる少年少女たちの成長を描いた青春小説で、瑞々しい筆致で繊細な心情を綴り、選考員から絶賛されました。読み手の心を包み込むような優しさは、実直な作者ならではのものだと思います。
普段はグラフィックデザイナーのお仕事をされている北原さんは、鋭い感覚で世界を表現します。可能性にあふれた25歳、新進気鋭の作家です。
『ふたり、この夜と息をして』/ポプラ社
城戸喜由 (きど・きよし)
賛否両論を巻き起こし
日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞!
1990年北海道生まれ。北海道在住。
2019年、「暗黒残酷監獄」で第23回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞しデビュー。
趣味はDTM。好きな作家は白井智之氏。
光文社 担当から
冒頭から人妻との情事に耽る男子高校生・清家椿太郎。同級生の異性から絶えず好意を寄せられ、友達は一人もいない、アクの強い主人公である。そんな彼の姉が十字架に磔の死体となって発見された。「この家には悪魔がいる」というメッセージを残したまま……。椿太郎は姉の死の真相を探るべく、家族の調査を始める。唯一無二のニヒリズムとユーモアが織りなす世界観は、選考会で激しい賛否両論を巻き起こすことに。その強烈なインパクトと共に、丹念に構築された本格ミステリの手筋が本作の魅力。シーンに新風を吹き込む新人の誕生だ。
『暗黒残酷監獄』/光文社
佐々木愛 (ささき・あい)
「オール讀物」新人賞作家
初の長編小説刊行!
1986年生まれ、34歳。秋田県出身。作家になるきっかけは「話すことが苦手すぎるという危機感」。好きな作家は小川洋子氏。好きなものはチルド麺「麺処井の庄監修辛辛魚つけ麺」。
文藝春秋 担当から
「きのこの山」と「たけのこの里」というお馴染みのお菓子が、こんなに切なく、印象的に登場する恋愛小説があるだろうか……。表題作の原稿を読んだ時、まず呆然としたのを覚えています。デビュー作『プルースト効果の実験と結果』は思春期の恋愛を描いた短篇集ですが、一篇ごとに読み味が違い、そのセンスに驚かされました。2021年1月には初の長篇『料理なんて愛なんて』を刊行予定。料理嫌いの女性が“料理は愛情”という呪縛にもがき迷走しつつ自分なりの答えを探す、この作家にしか書けない突き抜けた一冊。こちらもぜひご期待ください!
『プルースト効果の実験と結果』/文藝春秋
夏木志朋 (なつき・しほ)
斬新なデビュー作で新人賞受賞!
期待度120%の注目作家
1989年生まれ。大阪府出身・在住。
好きな作家はスティーブン・キング。
ポプラ社 担当から
アクの強いセリフが炸裂する濃密な文章と駆け引きに満ちた怒涛のストーリーテリングで審査員を唸らせ、第9回ポプラ社小説新人賞を受賞。社会との極度の緊張を強いられる個性的な人物造形、生理感覚の奥底に届く迫力の筆致で高校生と担任教師のバトルを描き切ったデビュー作『ニキ』は、エンタメとしての完成度と斬新なテーマが話題となった。人間観察に脈打つ情熱の深さ、快と不快、倫理と背徳の境界を描くキャラクターへの挑戦は、新世代エンタメ文学の幕開けとなるか? 次回作が気になってしかたがない期待度120%の新人作家だ。
『ニキ』/ポプラ社
藤原無雨 (ふじわら・むう)
撮影:橘蓮二
選考委員絶賛のデビュー作
第57 回文藝賞を受賞
1987年兵庫県姫路市生まれ。32歳。2020年『水と礫』で第57回文藝賞を受賞。マライヤ・ムー名義の共著『裏切られた盗賊、怪盗魔王になって世界を掌握する』がある。
好きな作家は保坂和志氏、好きなものは紅茶。
河出書房新社 担当から
東京と、砂漠に隣接する架空の町を舞台に、現代日本と神話的世界をつなぐ無限の旅路を描き、選考委員の磯﨑憲一郎、穂村弘、村田沙耶香が絶賛、第57回文藝賞を受賞した。「文藝」冬季号に掲載されるや多くの反響を呼び、「この10年ほどの純文学新人賞受賞作の中でも屈指」(「週刊新潮」栗原裕一郎氏)と高評価。「楽しかったし、ちょっと気持ちがラクになる」(「文藝」冬季号対談・穂村弘氏)読後感をもたらす。マライヤ・ムー名義でライトノベル作家としても活躍し、マルチな才能を発揮する破格の大型新人。
『水と礫』/河出書房新社