「児童向け図鑑」特集



新刊、話題書続々の図鑑コーナー

夏休み前シーズンの展開で盛り上げを!

 

 各社が刊行する「児童向け学習図鑑」シリーズをはじめ、多くの人気書籍が並ぶ図鑑コーナー。特に児童向けの図鑑書籍は、自由研究や自宅学習などで活用される夏休み前や、クリスマス、進学祝いのプレゼント需要がある時期など、特定のシーズンで売り上げが大きく伸びる商材だ。今回、各出版社の新刊書籍が刊行され、ステイホーム期間の読み物需要も見込まれる夏休み前シーズンに向けて、各取次が語る最新市場状況や、各社イチオシの学習図鑑シリーズと、バラエティ豊かな児童向け図鑑書籍紹介など、書店の図鑑コーナーを盛り上げる情報をお届けする。

 

▲表紙を大きく面で展開(丸善 丸の内本店)

 

ステイホームで図鑑も好調

 現在図鑑書籍は、児童書ジャンルにおける売り上げシェアの約20%(日販調べ)にあたり、その中で「小学館の図鑑NEO」、「講談社の図鑑MOVE」、「学研の図鑑LIVE」3社の定番シリーズが図鑑全体の売り上げの約90%(同)を占めている。
 昨年来のコロナ禍によるステイホームでの読書や自宅学習需要の高まりによって、図鑑書籍も前年の売り上げを超え、好調に推移。
 トーハンの担当者は「5月の『図鑑』ジャンルのPOSはコロナ禍前の一昨年比で153.0%と売上を伸ばし、「学習」ジャンルも150%台の伸長。親子で楽しむ家庭読書需要を確実に取り込んでおり、今夏も好調維持が期待される」と話す。
 日本出版販売の担当者は「1年間のうち、図鑑の売上構成比の約30%を6~8月が占めているため、夏休み前から大きく展開すべき。コーナーを用意し、平台でしっかりとフェア展開することで、お客様に対して図鑑売場をアピールすることが重要」と語る。

 

特長をアピール

 学習図鑑シリーズでは、「動物」「昆虫」「恐竜」といった定番ジャンルが安定した売れ筋だ。KADOKAWAが創刊する「角川の集める図鑑GET!」も、第1弾は上記3ジャンルだが、生き物を生息地別の分類で紹介するなど、新しい構成や工夫で差別化を図る。各シリーズそれぞれの特長が書店の来店客へ伝わるよう、違いを明確化して、読者のニーズに沿った提案が重要だ。

 

バラエティ豊かな図鑑を展開

 学習図鑑シリーズ以外にも、児童向け図鑑は多数刊行されている。「ざんねんないきもの事典」(高橋書店)シリーズのように、独特の切り口で生き物などの意外な一面を紹介する書籍や、「どっちが強い!?」(KADOKAWA)シリーズといった、「もしも」を連想させる読み物系も人気で、図鑑と併せて読むことでより興味関心が高まるという。

 

グローバルな知識への興味も高まる

 世界中でベストセラー図鑑を多数刊行する英国の出版社DK社の翻訳出版権を管理し、日本国内でも多数の出版社からのDK社図鑑の発行を仲介する、株式会社フォルトゥーナ代表取締役社長の榎本麻衣子氏は、学習指導要領の改訂や、知識のグローバル化によって、世界でベストセラーの図鑑タイトルが国内でもよく売れていると語る。
 伝統的な「知識を網羅する図鑑」に加え、見せ方やテーマに工夫があり、眺めて面白い図鑑も人気が出ており、高額商品でも価格に見合う内容であれば読者がついてくるという。
 書店店頭では読者が手に取れる位置に展開し、ポップやサンプルを出すことが効果的だと話す榎本氏は「本格的な作りの図鑑は読者が成長したあとも、長く楽しめる。また、兄弟や大人の家族と一緒に楽しむことができるので、プレゼントとしても非常に喜ばれる」とオススメする。

 

▲『なんでもいっぱい大図鑑 ピクチャーペディア』(河出書房新社刊、DK社編)

 

▲『さわって学べる算数図鑑』(学研プラス刊、DK社編)

 

 

「学研の図鑑LIVE」

学研プラス

 

最新デジタル技術でリアルな学習体験!
身近なところから世界を広げる図鑑シリーズ

 1970年に創刊した「学研の図鑑」から始まり、学習図鑑に50年以上の歴史を持つ学研プラスが2014年より刊行している最新シリーズが「学研の図鑑LIVE」だ。
 分類を重視しながら、ビジュアル面に大きく力を入れている同シリーズは、実物大で迫力のある写真やイラストを多数掲載。またBBC(英国放送協会)提供の、リアリティあふれる貴重な映像などが収録されたDVDも付属する。
 さらに、無料の連携アプリを図鑑にかざすことで、動物や恐竜を360度、拡大縮小しながら眺められる3DARや、動画コンテンツにアクセスできる。
 17年より編集長に就任した同社小中学生事業部・図鑑チーム総括編集長の牧野嘉文氏は、「ニューワイド学研の図鑑」で2012年に「世界の危険生物」テーマを初めて手がけるなど、昨今人気の「危険生物」ブームを先駆けた。
 読者からの「家族を守るために危険生物について調べています」という感想がとても印象に残っているという同氏は、「子どもたちは興味関心だけではなく、図鑑から生きるための知識も学んでいる」と語る。
 新たな販促施策としてVRコンテンツを視聴できる特製ゴーグルなども用意し、今後も「子どもの成長と共にある」図鑑として、学びに役立つ情報や仕掛けを提供していく。

 

▲紙面にかざして3DARを表示できる

 

▲見開きで実物大写真を掲載

 

 

「角川の集める図鑑GET!」

KADOKAWA


生息地域別の構成で世界もわかる!
いろんな仕組みで知識の獲得を促す最新図鑑

 KADOKAWAが今年創刊した『角川の集める図鑑GET!』は、従来とは異なる視点や工夫が満載された、全く新しい学習図鑑シリーズだ。
 種別の分類といった従来の図鑑の構成ではなく、生息地域別に紹介することで、生き物がどのような世界で関わり合って生きているのかが伝わるようにしたり、世界の地理や気候、環境問題などの学びにもなり、それぞれの知識が繋がって読者の興味が広がるなど、今までにない工夫が詰まっている。
 また、無料のオンライン図鑑「GET!+」を同時展開し、紙面上の写真やイラストをARマーカーとして読み取ることで、デジタルカードを獲得できる。
 さらに、同社が刊行する人気学習まんが「どっちが強い!?」シリーズとも連携し、そのキャラクターたちが登場することで、図鑑に読み物としての物語性や、謎解き要素を追加した。
 すでに多くの学習図鑑シリーズが出ている中でも、同シリーズが提案する新しい視点や一歩進んだ構成が書店員からも好評を得て、アドバイスなども貰いながら共に作り上げていったという。
 同社営業企画局書店営業部東日本一課の戸嶋正亮課長は、「とても自信がある、いままでと全く違う新しい図鑑。類書との差別化ポイントを店頭でしっかりと伝え、図鑑コーナー全体を盛り上げていきたい」と意欲を語る。

 

▲ブラウザ上に集めたカードをコレクション

 

▲同じ地域の動物が一目でわかる

 

 

「小学館の図鑑NEO」

小学館


市場をリードする大人気学習図鑑!
関連シリーズも豊富で広く展開

 小学館が刊行する「小学館の図鑑NEO」は、累計発行部数1,200万部を超える大人気学習図鑑シリーズだ。2002年に創刊し、改訂や新版刊行など情報のアップデートを重ね続け、今夏に刊行する最新刊『深海生物 DVD付き』でシリーズは25巻に到達する。
 3歳から高学年まで、長く使える本格図鑑として、豊富な情報量と最先端写真に付属DVDなど大ボリュームの作りが好評を博している。
 また、図鑑市場の盛り上げと、販売促進として多くのユニークな施策も実施。書店で図鑑を購入した読者が回すことができるオリジナルのガチャガチャが、実施店舗で大きな反響を呼んだほか、マクドナルドのハッピーセットにミニ図鑑の冊子をつけたり、新たに「小学館の図鑑NEO」シリーズをテーマにした、生物図鑑の世界に入り込むような体験ができる施設をオープンしたりするなど、書店の外まで広がる取り組みで、図鑑をより多くの読者へ届けている。
 ポケット版や絵本、知育図鑑など、関連シリーズも多数刊行しており、小さいお子様やシールやクイズなどで楽しく学びたい読者など、様々なニーズに応えることが可能。書店店頭でも、シリーズを並べて大きく展開することがオススメだという。

 

▲店頭を彩る拡材も多数用意

 

▲定番からニッチなジャンルまで幅広いラインナップ

 

 

「NHK『香川照之の昆虫すごいぜ!』図鑑」シリーズ

カマキリ先生、NHK「昆虫すごいぜ!」制作班/NHK出版

B5判/80㌻/各定価1,210円

 

大人気番組が待望の書籍化!
昆虫について楽しく詳しく学べる図鑑

 大の昆虫好きとして知られる俳優、香川照之氏が「カマキリ先生」に扮して、昆虫のすごさをアピールする番組「香川照之の昆虫すごいぜ!」(Eテレ)が、待望の書籍化を果たした図鑑シリーズ。2 1 年3月にv o l . 1 、6月にvol.2を刊行し、vol.3も9月の刊行を予定。
 番組放送内では詳細を伝えきれなかった、昆虫の生態や魅力を、迫力のあるビジュアルを豊富に掲載して紹介。さらに雌雄の見分け方や、虫と植物との関わりなども丁寧に解説し、虫たちの生き方をとおして、自然の偉大さに触れられる内容となっている。
 また、デジタルコンテンツや動画とリンクするQRコードや、4コマ、パラパラ漫画を掲載するなど、楽しめる要素が満載で、昆虫が好きな人から、そうでない人も楽しめるシリーズだ。

 

▲昆虫の生態を詳細に解説

 

 

「はっけんずかん」シリーズ

学研プラス

全8巻 A4判/36ページ/各定価2,068~2,178円


圧倒的人気を誇るしかけ絵本図鑑
知的好奇心が成長のきっかけに!

 学研プラスが1998年10月に創刊し、累計発行部数160万部超の大人気幼児向けしかけ絵本図鑑である「はっけんずかん」シリーズ。
 ただめくって楽しめるだけではなく、知的好奇心を刺激するしかけになっていたり、しかけページの次に写真や情報が満載の図鑑ページが挟まれていたりと、より理解を深めることができるつくりだ。
 「プレゼントにぴったり」「初めての図鑑として最適」と読者からの反響も大きく、夏とクリスマス前シーズンの定番商品として展開されている。
 同社編集も「創刊20周年以上のロングセラーだが、2014年から新版や改訂版も発刊して、さらに人気を集めている。たくさんのお子さんたちに楽しんでいただけるように、大切に作りました!」と意気込みを語る。

 

▲電車の中をのぞいて、構造がより深く理解できる

 

 

『こども手に職図鑑 AIに取って代わられない仕事100
 一生モノの職業が一目でわかるマップ付』

子供の科学と手に職図鑑編集委員会 編/誠文堂新光社

B5判変型/240㌻/定価2,860円

 

新しい生活様式で生きる子どもたちに!
生き抜く力を身に付ける職業100選

 2045年には現在の仕事の半分以上がなくなっていると言われる中、今の子ども達が将来働くことを考えるときに参考となる、「職を失うリスクが少ない」「再就職しやすい」「年を重ねても続けられる」「AIが参入しにくい」など、これから生き残る仕事100種を一挙に紹介するお仕事図鑑。
 YouTuberやAIプランナーなど最新の職業も掲載し、全て実際にその仕事に就いている人たちのリアルな声を取材。その職業でキャリアアップに必要なスキル・資格、実際の勤務実態や年収事情などを、1職業につき見開き2ページで掲載している。
 小さいうちから親子で将来を考える入門書としてはもちろん、リアルな進路を考える中高生にも役立つ内容で、幅広い世代から支持されている一冊。

 

▲総ルビ付きで小さな子でも読むことが可能

 

 

『世界でいちばん美しい こども元素ずかん』

セオドア・グレイ著/ニック・マン写真/若林文高監修/武井摩利訳/創元社

A4判変型/128㌻/定価2,640円

 

化学が苦手な大人も夢中になった!
世界的ベストセラーに待望のキッズ版が登場

 全世界で120万部を売り上げ、日本でも2010年に創元社が刊行して25万部を超えるベストセラーとなったポピュラーサイエンスの大ヒット図鑑『世界で一番美しい元素図鑑』から、子どもでもわかりやすいよう解説しなおしたキッズ版が登場した。
 「酸素」や「水素」など子どもにも身近な元素から、2016年に正式な名前が決まった「オガネソン」まで、現在発見されている118の元素について、美しい写真と、フリガナ付きの楽しい解説で紹介。
 STEM教育の必要性が叫ばれるなど、科学に関する知識の重要性が高まっている中、大きくてきれいな写真が満載で、用語集も収録している同書は、世界を形作っている元素について、興味を持つ入り口として最適な一冊だ。

 

▲美麗な写真で眺めるだけでも楽しめる