【特集】読者が選ぶビジネス書グランプリ2020

2020年3月5日


今回で5回目を迎える、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2020」(主催:グロービス経営大学院/フライヤー)。
主催社フライヤーの大賀康史代表が、授賞式で語ったように、今回、総合グランプリ『FACTFULNESS』、リベラルアーツ部門『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』など、「多様性の理解」をテーマにしたラインアップが特徴だ。
人種の違い、立場の違い、主義・思想の違い、それぞれが抱える問題を解決する糸口は、「他者への理解」から始まるのだろう。他にも生産性向上をテーマにした書籍など、各受賞作品を紹介する。


総合グランプリ/政治・経済部門第1位

『FACTFULNESS』
(ハンス・ロスリング 他/日経BP)

皆が求めた、正しく世界を見る方法

 2019年のビジネス書ベストセラー第1位。他にも数々の賞を受賞している本書が説く、人間の本能から来る思い込みを捨て、世界を正しく見るスキルは、ビジネスパーソンを始め多くの読者に衝撃を与え、日本でも圧倒的な支持を集めている。
 著者の一人であるアンナ氏は受賞メッセージで「再び日本を訪れ、読者に会えることを心待ちにしている」とコメント。担当編集者の中川ヒロミ氏も、多くの書店員が本書を展開してくれていることに感謝を述べ、「今では大きな事件があった時に、SNSなどで読者の方が、冷静になって、データをもとに、『ファクトフルネス』で考えよう。と言ってくださる方が増えて、本当に有難いことだと思う」と話している。

□A5判/400㌻/本体1800円


イノベーション部門第1位
『売上を、減らそう。』
(中村朱美/ライツ社)

「働きやすさ」と「利益」の両立

  本書の著者で、京都で1日100食限定の「国産牛ステーキ丼専門店佰食屋」を経営する中村朱美氏は、行列ができる人気店にも関わらず、残業ゼロを実現した経営者として、数々のメディアに取り上げられた。本書では、中村氏が掲げる「社員を犠牲にしてまで、追うべき数字なんてない」という理念のもと、「社員の働きやすさ」と「会社の利益」を両立させた、ビジネスモデルを紹介する。
 中村氏は本書について、「働き方改革の説明書、また処方箋として読んでもらえるよう、丁寧にありのままを書いている」と話しており、「業績至上主義」にとらわれない、これからの「働き方」を考えさせる1冊だ。

□四六判/264㌻/本体1500円


リベラルアーツ部 門第1位
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
(ブレイディみかこ/新潮社)

親子の日常を通して描く「世界の縮図」

 本書は著者ブレイディみかこ氏とアイルランド人の夫との間に生まれた息子が、英国で生活する中で、親子で考え、悩み、乗り越える姿を描くノンフィクション。
 息子は名門カトリックの小学校から、白人労働者階級が通う中学校に進学。荒れていたことで有名だったが、音楽や演劇、ストリートダンスといった授業に力を入れてから子どもたちの素行や成績も良くなったという。
 本書では、異国の地で暮らし、世界の縮図のような日常から、英国、日本、さらには世界が抱える現代社会の問題も浮き彫りにしている。
 贈賞式で著者は「これからは多様性の時代、外国の方々も増えることからもっとリアルになる。そのヒントになればと思う」とのメッセージを寄せている。

□四六判/256㌻/本体1350円



自己啓発部門第1位
『天才を殺す凡人』
(北野唯我/日本経済新聞出版社)

「人間関係の悩み」「才能」に答える物語

 本書は30万PVを超えた人気コラムをストーリー仕立てにし、書籍化した北野唯我氏による作品で、すでに10万部を突破している。本書では人間を「天才」、「秀才」、「凡人」の3つのタイプに分け、それぞれが異なる「軸」を持つがゆえに、コミュニケーションの断絶が生じると説く。物語を追いながら、「なぜ他人とすれ違ってしまうのか」「才能とは何か」「自身の才能を見出し、いかに伸ばすか」など、人間関係などの悩みについて答える1冊として、多くのビジネスパーソンに支持されている。
 受賞に際し、担当編集者は「読む人の立場や年齢によって、さまざまな読み方ができる本」と語っている。

□四六判/272㌻/本体1500円


ビジネス実務部門第1位
『メモの魔力』
(前田裕二/幻冬舎)

 

人生を変えるメモの魔法でミリオン目指す

 本書では、実業家の前田裕二氏が実践してきたメモの技術を惜しげもなく公開。著者や本書が様々なメディアに登場しているほか、オンラインサロン「メモ魔塾」など多くの施策が奏功し、若者を中心に人気を集め、読者を広げている。
 受賞挨拶で登壇した編集者の箕輪厚介氏も、「本を読むだけで終わらず、読者の人生がどれだけ具体的に変わるかが大事。コンテンツが飽和し、すぐに忘れられてしまう時代で、日常の隙間に染み渡るよう常に何かしらの接点を作ることを意識している」と語り、「100万部を目指しており、現在紙の発行部数で50万部を超えた。これから1年かけてミリオンを狙っていこうと思うので、引き続き、力を貸してほしい」と全国の書店員に呼びかけている。

□四六判/254㌻/本体1400円


マネジメント部門第1位
『学校の「当たり前」をやめた。』
(工藤勇一/時事通信社)

 プレイングマネージャーが実践した教育改革

 本書の著者は千代田区立麹町中学校校長を務める工藤勇一氏で、これまで取り組んできた学校の諸制度の改革を取り上げている。自ら学習し、将来を切り拓く力は「自律」が大切とし、大人が手を掛けすぎて、何でも他人のせいにすることのないよう、中学校の授業や行事を組みかえた。
 工藤氏は宿題、中間・期末テストをなくし、固定の担任制を廃止するなど、多くの全国の中学校で実施している制度などを問い直し、次世代を担う子どもたちにとって必要な学校の形を追求。贈賞式で著者は「10数年前に日本の教育をなんとかしなければと思い、プレイングマネージャーとして実践の中で改革してきた。この本にある、なぜこういうことが必要なのかという本質に、日本中が気付いてくれたら嬉しい」と述べている。

□四六判/216㌻/本体1800円