- ろうそくの灯に -

新しい灯

 本屋を経営していた時代、本屋の業界は、もしかしたら守られすぎていたのかもしれないと感じることがあった。自戒を込め、逃げ腰で仕事をしていた頃の僕は、こんなことを言い訳にしていた気がする。

・減り続けたとしても本屋は無くならないと信じていること
・旧来の方法が一番良いと信じていること
・もちはもち屋だとうぬぼれていること
・暇がないといって本を読まぬこと
・どうにかなると考えていること
・良いものは黙っていても売れると安心していること
・支払いは延ばす方が得だとなるべく支払わぬ工夫をすること
・お客はわがまますぎると考えること
・そんなことはできないと改善しないこと

 自店を閉じることを経て、これらの考えをすべて改めることに決め、今日まで仕事をしてきた。そこに、本屋を継続的に続けていくための灯があった。
 出版物の販売額は、年々減り続け上向く兆しも見えない状況にある。それに比例するように、本屋の数も少なくなっている。今までなら、新しい商業施設の計画があると、テナント構成に必ず本屋が入っていた。集客効果、滞在効果を期待してのことだろう。しかし、寂しいかな現在は、本屋のない商業施設が増え始めた。都市部の駅ビルでさえ、本屋のない商業施設が見受けられるようになってきた。本屋に、集客効果や滞在効果を期待できなくなってきたということなのだろう。厳しさは、年々増している。

 かつて、本屋は町の中心市街地の商店街にあった。生活様式の変化や車社会となり、郊外にできた大型商業施設に入居する大型店にお客様が流れた。その流れに押し出されるように、中心市街地の本屋は姿を消した。大型店は、経営を維持することができずに撤退し、大型商業施設は、本屋を必要としなくなった。
 電車と相性の良かった本。どこの駅ビルにも必ずと言っていいほど本屋があった。しかし、現在の電車の車内を想像してみてほしい。乗客の手元には、本がありますか?それを反映するように、本屋のない駅ビルが目に付き始めました。今後、その傾向は強まっていくでしょう。本屋のない町が増えることが…

 限りない可能性をもつ本を扱う業界が、自らを小さな世界で閉じた戦略しか持ってこなかったツケが、今の現状を生んだのかもしれない。
 しかし、諦めを希望に変えることは不可能なことではない。近年、小さな世界の外に向けたチャレンジが増えてきた。その挑戦こそが、新しい本屋の枠組みを作り出していくのだと感じている。