- ろうそくの灯に -

書店空白地域に本屋を

前回まで、「読書教育と本屋」について書いてきた。地方において、外的環境に左右されない持続可能な本屋の姿とは何か。書店員として24年間を過ごす中で、地方における本屋との関わりについて考え続けた末に辿り着いた結論の一つがそこにある。
 Foyer(ホワイエ)という仕組みをご存じだろうか。出版取次会社・旧大阪屋栗田(現楽天ブックスネットワーク)がリリースした、一冊からでも本を卸売りする新しいサービスだ。出版物流における新規参入の障壁を取り除いて組み立てられた物流制度のFoyerは、近年増えている個人書店の開店を後押しする役割を担ってきた。しかし、開店することと店を維持し続けることには違う難しさがある。僕が勤めていた書店を辞め、出版取次会社に入社したのは、この課題に向き合いたいという気持ちが大きかった。

 全国の自治体の約二割以上にあたる420市町村が無書店地域となっている。この市町村に書店を取り戻すことができたら、何か変わるだろうか。かつて、このうち多くの市町村には書店があった。しかし、様々な要因で閉店、撤退した地域なのだ。開店させることは可能かもしれないが、店を維持し続けることの難しさとどう向き合うのか。社会の仕組みの中に本屋を取り戻すためにできることは何か。
 書店員として過ごす日々の中で、僕なりの仮説を立てることができた。入社後、Foyerの担当者であるY氏と何度も膝を突き合わせて話し合い、ようやく少し前に進むことができる状況まで辿り着いた。
 それは、出版取次会社を含む流通構造上の問題も指摘されるが、まずは様々な代替メディアの登場により、紙の本が絶対的な存在ではなくなってきたことを認識するところから始まった。今、あえて紙の本を読んでもらうためには、紙の本に出合ってもらう必要がある。まちの中に本との接点を増やしていくことが、社会的な意義においても価値のあることだと考えた。本とのタッチポイントを維持・創出することは、Foyerの大きな役割である。

 カフェ、雑貨店、アパレルショップ、ホテルなど、書店以外の店舗において、既存商品に本を掛け合わせることで売場のブランディングやメイン商材とのシナジーを図るという事例が増えてきた。本によって来店客の回遊性を上げて、滞在時間を延ばし、メイン商材の購買を促すという方法論で、紙の本の価値が再認識されている。本の持つ性質上、様々な店舗にマッチした商品が必ずある。既存の出版物流ではそれを支えることができなかったが、小規模な書籍の商流であるFoyerはそれを実現できる。
 Foyerは、フランス語で入口や玄関を意味する。店舗とお客様にとっての、紙の本の世界への入り口になりたいという考えからつけられた名前だと聞いている。僕は、その入り口から入ったプレーヤーが、維持し続けるプレーヤーになってもらえるための下支えができたらと思っている。近々、僕らがFoyerの先に見ているものをリリースできるかもしれない。さてと、今日も頑張って本を届けましょうか。