- 湯浅の眼 -

「動く書店」の時代

まずは、2つの台風の被害にあわれた皆様方に御見舞を申し上げたい。輸送の観点からすれば、ほぼ10月いっぱいにわたり東北本線の区間不通は大きかったように思われる。10月は台風の影響が大きかったがゆえに、消費税の影響を見極めるには難しいが、日本出版販売が公表しているデータによれば、雑誌92.8、書籍90.2、コミック103.2、開発品98.7の合計94.0である(11/7ニュースリリース)。『鬼滅の刃』がコミック(少年雑誌コミック128.3)を、『十二国記』が書籍ジャンルの文庫(94.7)を支えたと言うことができ、それがなかったら、という気持ちにもなるが、そもそも基本的には違うアイテムでもって「前年比」を見ているのであるから、このタイミングでの刊行はラッキーなことであった。2014年の消費税アップのときには、ピケティの『21世紀の資本』が12月に刊行され、高額商品であったこともあり、かなりの押し上げ効果があった。消費税アップ時にはベストセラーが誕生する、と臆見を唱えたくなるが、もちろん偶然であろう。

 さて、消費税対策としてどのようなことが行われてきただろうか。たとえば、11/1の「本の日」プロジェクトがあるだろう。もちろん、これ自体は「消費税対策」というよりは「長期低下傾向への対策」であるが、1つのキャンペーンである。しかし、このプロジェクトが全国的に行われているか、というと少しく疑問がある。もちろん、まだ2回目であるから、「これから」の要素も大きいであろう。今後の進展を期待したい。

 他方、このような「単発キャンペーン」だけでは消耗戦になってしまうこともまた明らかだろう。音楽購入手段がサブスクリプションに移行しているように、「娯楽」としての読書もまたサブスクへと移行していくであろう。それが(電子書籍などの)「データ」であれ、(製本された)「モノ」であれ、そちらへと変化していくことは必定である(ただし、メーカー側において費用収益対応原則が絶望的に一致しないので、サブスクを可能とし、利益を出し続けるには大資本が必要となる。なお、小規模で行うことは可能ではある)。サブスクそのものではないが、「一万円選書」のような「単品購入とは違った付加価値」をつけていかなければならないということである。
 この方向の中で「書店」が生き残るには、これまでの「静」のあり方からの脱却、つまり「動く書店」が求められていくのだろう。