- 湯浅の眼 -

Amazonの仲間卸の意味

 Amazonが2/7付で公表した「仲間卸」施策。単純に言ってしまえば、トーハンのブックライナーや楽天ブックス(ネットワークではなく、通販の方)の「書店様向け客注サービスβ版」と同じ役割とみることができる。要するに既存の取次ルートよりも高正味だが早く着荷するというものと考えてよいだろう。もちろん、客注対応に限られるものではなく、通常の仕入れに使うこともできる。


 Amazonがその正味を公表しているわけではないが、Amazonビジネスという既存サービスの「書店向け」とみることができ、そうであれば、手数料としては、8〜15%と成約手数料として1冊あたり80円ということになる(送料は2000円以上であれば無料)。出版社が卸値を指定できるので、定価よりも安い可能性があり、また、翌日(または翌々日)に入荷してくるというリードタイムのメリットを受け取ることができる。


 このビジネスにAmazonが進出してきた背景は2つあるだろう。1つは「個人売り」の紙書籍販売ビジネスはそろそろ頭打ちが見えてきたことである。数字を公表する会社ではないが、紙とKindle(電子書籍)の合計値は上がっており、Kindleのそれはあがっているが、紙のそれについては言及がないところから、少なくとも「絶好調」とはいえないことは推測できる。したがって、BtoCではなく、BtoBの部分においても売上を確保しに行かなければならない、ということである。


 もう1つの重要なポイントは、Amazonとの直取引を行っている出版社が大多数となった、ということが挙げらる。既存の取次であってもすべての出版社の商品を仕入れることはできないわけで、Amazonが「客注ニーズがある」と判断した物品数がこれらの直取引出版社でほぼカバーできるということがいえるだろう。直取引であれば、調達スピードは取次経由よりも基本的には早くなる。


 さて、この施策から、既存の取次モデルが目指していた「安価に配達する」という目標が狙われていると考えられよう。すなわち、「安く配達する」ことと「早く配達する」ことの2つの軸のうち、より後者に重きが置かれるようになっている、ということである。もともとAmazonをはじめとするECサイトが成功したのもその軸であり、その意味ではAmazonの姿勢はブレておらず、これが既存取次ルートの価値である「安さ」への対抗軸としての「速さ」ということである。