- ろうそくの灯に -

「本屋」とはなんだろう

本屋業界に身を置くようになり今年で26年目を迎えた。この間、1冊でも多くの本を売るためにできることを考え続けてきた。一方で、ずっと考えていたことがある。「本屋」とはなんだろう、という問いだ。

 様々な仮説を立てながら、街には本屋が必要だと言い続けてきたが、自分自身ストンと腹落ちできる仮説を立てられずに本屋の現場を離れて1年が過ぎた。毎日本に触れることのできない環境は寂しいが、本屋を別の角度から考えることができた1年だった。変わらずに考え続けたのは、やはり「本屋」とはなんだろう、だった。

 東日本大震災から9年目を迎えたこの春、作家・柳美里さんが2015年に鎌倉から南相馬市へ移住してから2019年までの、街との親密な関係を築いていく過程をまとめた『南相馬メドレー』(第三文明社)を刊行した。

 柳さんは、2018年4月には小高の駅通りに書店「フルハウス」をオープンし、店長として店を切り盛りしている。「フルハウス」をオープンする前の2017年12月に、『春の消息』の刊行を記念したイベントで、対談をさせていただいた際、柳さんが小高という地に、書店「フルハウス」を開店する意味を問いかけた。

 限られた時間であったことと、オープン前であったこともあり、概念としては理解することができたのだが、「本屋」とはなんだろうという問いに対する答えを見つけることはできなかった。オープン後、必ず伺いますという約束を果たせないまま時間が経過していたことを気にしていた時、『南相馬メドレー』のゲラをいただき読ませていただいた。

 鎌倉から南相馬市へ移住した6年間の柳さんの揺れる心と揺るぎない信念が詰まった1冊だった。書店「フルハウス」とそこでの約2年間を、「言葉の役割を絶えず問われる場所」であり、本は単なる商品ではなく、読者は消費者ではないと感じた、という記述に触れ、まさにそれこそが僕の知りたかった「本屋」とはなんだろうという問いに対するヒントがあると考え、3月23日に書店「フルハウス」を訪れた。

 リニューアル直後のお昼時ということもあったのかもしれないが、多くのお客様で中に入ることもできず、待ち合わせの14時まで小高町内を散策し、店に戻ってもなお、お客様でにぎわう店内にエプロン姿の柳さんが忙しそうに動きまわりながらお客様と会話をする姿があった。(つづく)